不惑にして惑う男の日記

四十にして惑う男が書く様々なネタ

破れ奉行 速水右近・てめえらぁ斬る!

絶えて久しく、時代劇らしい時代劇にお目にかかっていない。

ここで俺が言う時代劇とは、世にはびこる悪を成敗する勧善懲悪のスタイルのあれだ。

現在放送中の某国営放送「おんな城主~」など、正直見たいという気すら起こらん。

今の俺が見たい時代劇をあげろと言われたら、真っ先に「破れ奉行」を挙げたい。

これほど破天荒で豪快な時代劇は他に知らない。

主演は「ヨロキン」こと萬屋錦之介

破れ傘刀舟 悪人狩り」に続く通称「破れシリーズ」第2弾だ。

それでは、この「破れ奉行」とは、どんな作品かご紹介しよう。

ならんならん、ならんぞ右近!

老中稲葉越中守によって江戸に呼び戻された速水右近は、その稲葉を通じて“将軍”から葵の御紋付きの将軍家拝領の刀を下賜されることを条件に、深川奉行に就任する。

出典:破れ奉行 - Wikipedia

このドラマでは、「江戸の掃き溜め」と呼ばれる深川(現在の東京都江東区)界隈を主な舞台として話が進む。

その深川を取り締まる深川奉行に任命されたのが、主人公・速水右近である。

深川に暗躍する巨悪(だいたいが幕府高官+悪徳商人)を叩っ斬るという強大な権限を与えられた我らの破れ奉行。

ただし、幕閣としては表立っては「斬り捨て御免」を許可することはできない。

従って、将軍からの拝領刀を与え、「この刀を汚す物あらば」と暗黙で「斬り捨て御免」を右近に認めたわけだ。

この右近、冷静沈着にして大胆不敵、下情に通じ人望も厚い剣の達人という完全無欠の主人公だ。

「破れ奉行」の名に恥じぬ型破りな行動で、次々と難事件を解決していく(というより、闇に葬っていく)。

クライマックスは 悪人の屋敷に乗り込む右近。

その斬り込みスタイルもすごければ乗り込み方もすごい。

右近は頭巾と下がパンタロンっぽい袴、長上着、拝領刀を身に着け銛を片手に鯨船に乗りこみ、単身で諸悪の根源である人物の屋敷に夜襲を仕掛け(第10話、第23話では鯨舟で屋敷に突っ込んでいった)、その一味を一網打尽に成敗する。悪人一味の前で頭巾の口元の部分をとって右近の正体を明かし、拝領刀の葵の御紋を「頭が高い!」と悪人にかざしてから「天に代わって破れ奉行、てめえらぁ斬る!」と叫び(最初の一太刀をまず襲ってきた悪人の部下に浴びせてからが多い、また、第1話は決め台詞の最初だけ「上様に代わって破れ奉行・速水右近」と言っていた。)、そこから大立ち回りが繰り広げて悪党を一網打尽に斬って捨て、全ての悪を切り捨てると懐から和紙を取り出し、拝領刀に付いた血を拭いてから巻き散らすように捨てつつ刀をしまうが定型である。

出典:破れ奉行 - Wikipedia

そう、乗り込む手段が何と船頭が漕ぐ鯨舟。

この鯨舟と船頭は、右近と昵懇の御船手頭・若林豪…ではなくて向井将監からのレンタル。

しかも将軍家拝領の刀を携え、頭巾にパンタロンというスタイルだ。

時には鯨舟ごと悪人の屋敷に突入、というドリフさながらの殴り込みを敢行。

その凄さを下記の動画でご紹介しよう。

爆笑必至の鯨舟突入シーンに加え、あの森山周一郎が斬られ役で登場しているのがツボだ。

刑事コジャック」の森山周一郎だ!

「ニューヨーク怒りの用心棒」が「破れ奉行」に斬られるシーンは必見。

       ↓ ↓ ↓

Yabure-bugyo #10 - YouTube

 

聞くところによりますと、〇〇様は心の臓が至って弱く・・・

犯罪の確証が固まると右近は老中稲葉の元に相談に出向く。しかし、老中たる稲葉の立場としても表立って処罰を加えることはできない立場の人物が相手であることから、右近に表立って断罪を指示することもできない。そのため老中稲葉と右近は互いに肚の内を隠して悪態をつきつつ、やがて稲葉が「わしは知らん」「この件は忘れろ」など断罪を許可する間接的な示唆を与えるまでの掛け合いの場面が1つの見所となっている。

出典:破れ奉行 - Wikipedia

悪人の尻尾をつかんだ右近。

これまでの時代劇なら、悪人宅に乗り込んで問答無用でバッサリという描写だ。

しかし、この「破れ奉行」では、上司である老中・稲葉越中守にお伺いを立てるというプロセスがこれまでの時代劇と一線を画している。

さすがお奉行、ちゃんとお伺いを立てるのだ。

ただ、この「お伺い」の言い回しが凄い。

この場面で右近の側が「近頃○○様は心臓の発作がひどく、いつ頓死するか分からぬ状態とか」などと悪人が近々“急死”することを示唆する発言をする場合がある。

出典:破れ奉行 - Wikipedia

 

つまり、「悪人を始末するから、心臓発作かなんかで急死ということで片づけてくださいよ」という意味。まあ、殺人を示唆してるワケだ。

また、ヨロキンの切り出し方が「聞くところによりますと」と今思い出したかのようにわざとらしいのだ(しかも、セリフ回しが様になってる)。

これに御老中慌てて「ならんぞ、右近!○○は上様お気に入りじゃ。手を付けること相ならん!」と「ならんぞ」を連発するのがお約束。

しかし、御老中もなかなか食えないタヌキジジイだ。

一応は止めるフリして「ならんぞ」を連発したものの、その後「頓死か・・・」とほくそ笑むのである。

文章で書いても面白味が伝わらんので、下記の動画で御老中の「ならんぞ」を堪能して欲しい。

       ↓ ↓ ↓

「破れ奉行」稲葉越中守詰め合わせ by owarabi - ニコニコ動画

 

天に代わって破れ奉行、てめえらぁ斬る!

というわけで、悪人宅に乗り込んだ我らの速水右近。

悪人どもは深川奉行の追及は察知していたものの、権力をかさに着て高笑い。

そこへ突然現れた頭巾にパンタロン姿の正体不明の男。

視聴者には「正義の味方・速水右近」とインプットされてるが、鯨用の銛(もり)を持って現れた姿、どう見ても殺人鬼だ。

「何者だ!頭巾を取れ、頭巾を!」と誰何されるも、「(頭巾を)取ったらテメエら、困るんじゃないのかい?」と不敵に笑う深川奉行。

そして、男の正体を知ってフリーズする悪人ども。

逃げようとする悪徳商人があえなく銛で仕留められる。

「ええい!頭が高ぁ~い!」と拝領刀の葵の御紋の御威光で、悪人どもを圧倒。

そして、「天に代わって破れ奉行、てめえらぁ斬る!」と大量殺戮モードに突入するのであった。

たった一人で数十人をぶった斬るとはさすが「破れ奉行」。

もちろん、悪人どもは「急死」として稲葉越中守が処理するのだった。

それにしても、萬屋錦之介の殺陣は様式美の極致。オーラ全開でしかも美しい。

鯨舟を作って自分のプロダクションを倒産させたというエピソードも「破れ奉行」の異彩を際立たせている。

しかも、脚本をメインで手掛けた池田一朗とは、あの隆慶一郎だ。

道理で突き抜けた内容だと納得。

これほどのパワーあふれる時代劇、今のご時世では作れんだろう。

まあ、現代の脚本と役者と制作陣でリメイクしても、本作の完成度を貶めるのは目に見えているからなあ。

全話視聴したことがないんで、DVD化を切に望む。